チョンキチの大冒険

 

 

 

とある街の郊外に、ある家族が住んでおり、その家族は、犬を一匹飼っていました。

その犬の名前は、大五郎といいます。大五郎は5歳のオスです。

その家で飼われるようになって、5年が経ちました。

また、大五郎は、毎朝、その家のお父さんや、お母さん、子供たちが散歩に連れて行ってくれるのが、とても楽しみでした。

そろそろ、今日の散歩の時間です。

朝の7時30分になった時、玄関のドアがガチャッと開いて、小学生3年生のカイト君が出てきました。

カイト君は「ほら、大五郎、今日も散歩に行くぞ!」と言うと、大五郎の首に繋がっているリードを握り、歩き出しました。

「ワンワン!」大五郎は、散歩に連れてってもらえるのが嬉しくて、吠えています。

カイト君と大五郎は、家の前の道をどんどん歩いて行きました。そして、2キロぐらい先の公園ところで、折り返して、また家に戻ってきました。

「今日も、いい運動になったか? 大五郎」とカイト君は言い、リードを犬小屋に元通り結びつけました。

大五郎は、「ワン!」と、元気に返事をしました。

そして、カイト君は、家の中に入っていきました。

それから少し時間が経ち、大五郎は眠気を感じ始め、ウトウトしてきました。

その時です。

大五郎は、なぜか背中に、かゆみを感じ始めました。

「ワンワワーン(あれ。なんだか背中がかゆい)!」と言うと、後ろ足で背中を掻こうとしました。

しかし、足が、かゆい部分に届きません。

しかたがないので、大五郎は、体をブルブルッと振るわせました。すると、

ピヨーン、チョコン。

何かとても小さいものが大五郎の体から飛び出し、鼻の上に乗りました。

大五郎は「なんだあ~? これは。」と言うと、鼻の上に乗っている小さなものを見ました。

その時、その小さなものが、「おい! 僕は、君の背中の毛の中に住んでいる、ノミのチョンキチだ。」と言いました。

大五郎が「えっ! 僕の体に住んでいるノミ? そうか。でもなんで、僕の体から飛び出したんだい?」と聞きました。

すると、チョンキチは、

「僕はねえ、もう何年も君の背中の毛の中で暮らしてきたけど、そろそろ他の犬の体に引っ越したくなったんだ。だから、その出発の前に、君に、さよならを言おうと思ってさ。」と言いました。

すると、大五郎は、「そうかあ~。もう、かゆい思いをしなくなるからラッキーのような気もするけど、さよならだと言われると、少し寂しいような、変な気分だなあ。」と言いました。

その時、玄関のドアがガチャッと開き、ランドセルを背負ったカイト君と小学1年生の妹のルミちゃんが出てきました。

そして、カイト君とルミちゃんは「行ってきまーす。」と言うと、学校へ向かって歩き出しました。

そして、大五郎の横を通り過ぎようとした時です。

ノミのチョンキチが、ジャンプしました。

ピョーン! 

すると、チョンキチは、カイト君のランドセルの中に入ってしまいました。

大五郎は「チョンキチが、カイト君のランドセルの中に入っちゃったぞ! これからどうするんだろう?」と、少し心配になりました。

そして、カイト君とルミちゃんは通学路を歩いて行きました。

しばらくして、二人は、学校に到着しました。

ピンポーン、パーン、ポーン、ピンポーン、パーン、ポーン♪

と学校のベルが鳴り、カイト君の教室にも、先生が入って来ました。

その時、チョンキチは、カイト君の筆箱の中に隠れていたのです。

そして、カイト君が筆箱を開けた時、チョンキチは、勢いよくジャンプしました。

ピョーン!

すると、チョンキチは、なんと、先生の髪の毛の中へ着地しました。

でも、チョンキチの体は、とても小さいので、誰も気が付きません。

そして、その授業が終了し、先生は職員室へ戻って行きました。

先生は、「授業中、少し、頭がかゆかったけど、昨日、お風呂に入らなかったからかな~。」と独り言を言っています。

一方、チョンキチは、先生の髪の毛の中から、外をキョロキョロと見回しています。

その時、職員室の中に、猫が居ることに気が付きました。

間もなく、チョンキチは、また、勢いよくジャンプしました。

ピョーン!

今度は、その猫の背の毛に着地しました。

着地した瞬間、チョンキチは大変なことに気付きました。

「猫の体の毛は、こんなに短かったのかあ!」と。

そのため、チョンキチは、猫の体から落ちそうになりました。

「あっ、危ない! 落ちそうだ!」と言い、落ちないように、思わず猫の背中の皮膚に、口でパクッと噛みつきました。

その瞬間、猫は、目をパチッと見開き、「ギャオーーッ!」と叫びながら勢いよく走り出しました。

そして、辺り構わず飛び回ったため、職員室の中は大騒ぎです。

先生がどんなに追いかけても、猫は止まることなく暴れ回ります。


ドタン、バタン、ドタン、バタン・・・バシャー。

先生たちのお茶や、コーヒーの入ったコップをひっくり返し、机の上はベチャベチャになるし、もう大変です。

「おい! 誰か、猫を捕まえろー!」と、校長先生が叫びました。

でも、猫の動きが素早くて、誰も捕まえることができません。

ガチャーン、バリバリ! ドスン!

もう、職員室の中はメチャクチャです。そして、その猫は、職員室の窓が開いていることに気付き、そこから外へジャンプしました。

ビョーン

「あっ! 猫が窓から飛び出したぞ! ここは3階だぞ、あの猫、大丈夫か!?」と校長先生が叫びました。

でも、大丈夫。

猫はジャンプの名人。3階ぐらいの高さなら、飛んで降りても全然平気です

そして、猫は、学校のグラウンドになんなく着地し、また勢いよく走りだしました。

タッタッタッタッタッタッタッ・・・・

グランドの上を、凄い勢いで、走っていきます。

走れば走る程、チョンキチが振り落とされまいと、しっかりと背中に噛みつくので、猫は痛くて痛くて、どうしようもありません。

猫は、背中に噛みついているチョンキチを何とか振り落とそうと必死なのです。

その時、グラウンドでは、小学1年生の生徒たちがドッジボールをしていました。

よりにもよって、猫は、その方向へどんどんどんどん走って行きます。

タッタッタッタッ・・・・

そして、ドッジボールのボールを手に持って、今にも投げようとしている女の子の背中が近づいてきました。

猫は、痛さのあまり、前を全く見ないで走っています。

「あっ! あぶない!」、先生が叫んだ時、

タッタッタッタッタッタッ・・・ドスーン!

とうとう、猫は、その女の子に後ろから、ぶつかってしまいました。

そして、女の子は、その場に倒れて動きません。

「おい! 大丈夫か。」と先生が言って、女の子に近づいてきました。

その女の子は「うーーーーー痛い。でも、大丈夫、膝をちょっと擦りむいただけだから。」と言いました。

そして、女の子は先生に連れられて保健室へ行き、保健の先生から膝にバンソウコウを貼ってもらいました。

女の子は、バンソウコウを貼ってもらっている時、なぜか急に頭が、かゆくなってきました。

「昨日もお風呂に入って、ちゃんとシャンプーしたのに、なんで?」と独り言を言いました。

その時、ノミのチョンキチは、なんと、その女の子の髪の毛の中にいたのです。

つまり、猫が女の子の背中にぶつかった瞬間、女の子の髪の毛の中へ飛び移っていたのでした。

「しめしめ、うまくいったぞ、僕の旅も順調だ。」とチョンキチが言いました。 

ピンポーン、パーン、ポーン、ピンポーン、パーン、ポーン♪

と学校の授業の終わりを告げるベルが鳴りました。

生徒はみんな、家に帰り始めます。

猫が背中にぶつかって膝を怪我した女の子も、かゆい頭を掻きながら、家へ向かって歩き出しました。

しばらく歩き、その女の子は自宅に到着しました。

女の子が、自宅の庭にある犬小屋の前を通って、玄関へ入ろうとした時です。

ピョーン。

チョンキチは、女の子の頭からジャンプしました。

そして、その犬小屋に繋がれている犬の背中に着地しました。

ピタッ!

「フ~、やっと、別の犬の体に到着したぞー。良かったー、引っ越し大成功!」と、チョンキチは大喜びです。

しばらくして、その家に住む、もう一人の小学生の男の子が帰ってきました。

その男の子は、同じく犬小屋の前を通って、家の玄関へ入ろうとした時、犬に向かって言いました。

「今日も、退屈にしてたかあ? 明日の朝、また、散歩に連れていくからな、大五郎!」と言いました。

『エーーーーーーーーーー! 大五郎だって!?』とチョンキチが叫びました。

そうです、チョンキチは、大冒険をしたのに、また、大五郎の背中に戻って来たのでした。

 

 

 

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