コウちゃんと雲
このお話は、空の雲を眺めることが大好きな少年の物語です。
少年の名前は”コウちゃん”といい、小学3年生です。
空を流れる雲が色んな物の形に見えることが、コウちゃんにとっては、とても面白いのです。
ある日、コウちゃんは、いつものように空を流れる雲を見ながら、何の形に見えるか考えていました。
『あっ、あれは、魚。あっ、あれは、飛行機・・・』
でも、そうやって考えることに、最近ちょっと飽きてきました。それで、『あっ、あの雲は丸くてアンパンみたいだな。僕、お腹が空いてるし・・』
そこで、コウちゃんは「アンパンになーれ、チチンプイプイ!」とふざけて言ってみました。
でも、何も起きません。
「アンパンに、なるわけないかあ、もう、今日は、考えるのやめたー。」と言いました。
コウちゃんは、その日の夜、雲のことは忘れて、ぐっすり眠りました。
そして、次の日の朝が来ました。
コウちゃんが布団から起きると、なんと枕元に、アンパンが置いてありました。
「わっ、何だ? 誰が置いたんだろう?」
「まさか、昨日、アンパンになーれ、チチンプイプイと言ったからかなあ。」
そして、コウちゃんは、そのアンパンを朝ごはんの時に、食べてみました。
「甘いアンコがギッシリ入っていて、とても美味しい。」とコウちゃんは大喜びです。
そして、その日、コウちゃんは、また空を流れる雲を見ながら、何の形に見えるか考えることにしました。
すると、ピカチューの形に似ている雲が流れてきました。それで、コウちゃんは「おもちゃのピカチューになーれ!」と言ってみました。
そして、コウちゃんは、今日の夜もぐっすり眠りました。
次の日の朝が来て、コウちゃんは目を覚ましました。
すると、なんと、本当にコウちゃんの枕の近くに、ピカチューのおもちゃが置いてありました。
「やったー! これ欲しかったんだよ!」と、大喜びです。
コウちゃんは、今日も雲を見るのが、とても楽しみです。だって、本物になるのですから。
さてさて、今日もコウちゃんは、空の雲を眺めています。
でも、なかなか、自分の欲しい物の形をした雲が流れてきません。
それから、かなり時間が経ち、コウちゃんは、考える事にだんだん疲れてきました。
その時です、ようやく、コウちゃんが欲しいと思っている雲が流れて来ました。
コウちゃんが欲しいのは、ゴジラのおもちゃです。
その雲は、ちょうどゴジラの形に似ていました。
それで、コウちゃんは大きな声で「ゴジラになーれ、チチンプイプイ!」と言いました。
そう言った後、コウちゃんは「あっ! しまった。『おもちゃの』と言うのを忘れちゃった。どうしよう。明日の朝・・・まさか、本当に・・・」
そして、コウちゃんは、明日、何か凄い事がが起きそうで不安でしたが、夜になると眠くなり、すぐに寝てしまいました。
夜が明けて、次の日になりました。
朝日が昇って来た時、コウちゃんを起こしたのは・・・
「ガオーーーーー!!」という、でっかい怪獣の声でした。
コウちゃんは、バッと、布団から飛び起きました。そして、窓の外を見ると、なんと、本物のでっかいゴジラが、街の中で暴れていました。
「どうしよう。どうしよう。大変な事になったよ。」コウちゃんは、どうしたらいいのか分かりません。
ゴジラは街の中で暴れて、家を壊したり、ビルを倒したり、自動車を手で掴んで海へ放り投げたり、やりたい放題です。
おまけに、「ゴー!」と、口から火も吹いています。そして、その火で、街の住民たちの家々が火事になっています。
「あー、僕の街が、燃えて無くなっちゃうよー」
その時、コウちゃんは、どうしたら、あのゴジラをやっつけることができるのか、考えてみることにしました。
「そうだ。また雲を見て、ウルトラマンかガメラに似ている雲を見つけて、チチンプイプイと言えばいいんだ。」と、とてもいい考えを思いつきました。
それで、コウちゃんは、一生懸命、空を見ようとしました。
しかし、ゴジラが吐いた火で燃えている家々から、煙がモクモクと空へ昇っていき、空は煙だらけで空全体が真っ白になっています。
「どうしよう。空全体が白くなっていて、煙なのか、雲なのかわからない。何の形にもなっていないよ。これじゃあ、ウルトラマンもガメラも出せないよ。」
「どうしよう。でも、このままだと、僕の街は、ゴジラにメチャクチャにされてしまう。」とコウちゃんは思いましたが、どうしたらいいか分かりません。
空全体を、白い煙が覆っているため、何の形にもなっていないのです。
そして、その雲を見ながら、コウちゃんは、とうとうやけくそになり、「大きな大きな布団になーれ!チチンプイプイ。」と叫びました。
そして、コウちゃんは、まだ夕方ですが、布団に入って寝ることにしました。
「はやく、寝よう。寝るしかない。」とコウちゃんは思いました。
そして、次の日の朝が来ました。
コウちゃんは、急いで窓の外を見ました。すると、まだ、ゴジラが暴れていました。
「やっぱり、どうにもならないかあ。どうしよう。」と言い、途方に暮れてしまいました。
それから、少し時間が経った時です。
朝なのに、外の景色が、だんだん暗くなってきました。
「なんだ? 朝なのに、変だぞ。」
そして、空から、ゴジラやコウちゃんのいる街に、とてもとても大きくて広い物が近づいて来ます。
そうです。それは、街全体がすっぽり入るような、大きな大きな布団でした。
そして、コウちゃんは逃げたかったけれど、布団が大きすぎて、無駄だと判りました。
そして、
バサーーーッ
ついに、その布団は、街全体に乗っかりました。
コウちゃんの頭の上にも、布団が乗っかっているから、ゴジラも動けないけど、コウちゃんも動くことができません。
布団を押しても、押しても、重たくて、ただブヨブヨしているだけです。
そして、コウちゃんは、やけくそになって、また叫びました。
「苦しーーーい! 誰か助けてー!」と。
すると、布団がめくれて、頭の上から布団が無くなり、苦しくなくなりました。
そおーっと目を開けると、そこには、お母さんの顔がありました。
お母さんは、笑っています。
「コウちゃん。夢見たんでしょ。布団を、自分の頭にかぶったまま、苦しそうだったわよ。」と、お母さんが言いました。
その布団は、いつもコウちゃんが使っている、普通の大きさの布団です。
そして、窓の外を見てみました。そこに、ゴジラはいませんでした。
火事も起きていません。家も壊されてもいません。
いつもの街の景色が広がっているだけでした。
コウちゃんは、思いました。「なーんだ。夢かあ、アンパンも、ピカチューのおもちゃも夢だったんだあ。ガックリ。」
そして、お母さんが言いました。
「コウちゃん、早く起きないと学校に遅刻しちゃうわよ。」
コウちゃんは、「ハーイ」と言って起き、朝ご飯を沢山食べて、元気良く学校に向かいました。
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